〔J3第14節:鹿児島vs.藤枝〕レポート:「27人全員が戦う」鹿児島。交代選手が躍動し首位の座を守る。

  • この試合でも、攻撃に守備にハードワークを続けた五領淳樹選手。チームさらなる躍進のためには、彼の活躍は欠かせない。
  • 明治安田生命J3
  • 第14節
  • 鹿児島
  • 藤枝
  • 83分川森有真(鹿児島)
  • 鹿児島県立鴨池陸上競技場
  • 2016年6月26日19:00

試合後、鹿児島ユナイテッドFC・浅野哲也監督は「苦しいゲームでした」と振り返ったが、その言葉通りの難しい試合だった。 この日の対戦相手藤枝MYFCは、大石篤人監督がベンチ入り停止処分となっており、代わって田中遼太郎コーチが監督代行として指揮を執った。田中コーチは「不安が全くないと言ったら嘘になる」としながらも、「これまで培ってきたものを発揮しよう」「自分たちのスタイルを貫こう」と選手たちに声をかけたという。その言葉に応えるように、藤枝の選手たちは大石監督の不在を感じさせない一体感で戦い抜いた。 そんな藤枝の見事な戦いぶりに苦しんだ鹿児島だったが、それでも勝利を掴み取れたのは、ピッチの11人だけではなく、ベンチ入りした選手、そしてベンチ外の選手も含めた「27人全員が戦う」という選手たちの姿勢があったことも要因の一つだろう。

試合開始直後、まず攻め込んだのは鹿児島だった。ショートパスで藤枝ディフェンスを切り崩し、サイドからチャンスを作っていく。
守っては高い位置からのプレスが効果を発揮し、相手陣内でボールを奪うと、ショートカウンターにつなげていく。
序盤は鹿児島ペースのように思われたが、藤枝としてはこのあたりは想定内だったようだ。藤枝は、鹿児島のパスワークに対しあまり深追いはせず、しっかりとブロックを敷いて守る。鹿児島は相手陣内まで攻め込むことはできるが、藤枝のディフェンス陣はペナルティエリア内に人数を揃えており、得点機につなげるまでは至らない。得点ランクトップタイのFW藤本も、ポストプレーでチャンスメイクに貢献するものの、マークが厳しくなかなか決定的な仕事はさせてもらえない。
逆に、鹿児島は中盤でボールを奪われるシーンが目立ち、そこからカウンターにつなげられてしまう。ただ、藤枝もあまり前線までボールが渡らず、どちらも決定機を迎えることなく前半30分を経過した。

先に決定的な場面をつくったのは鹿児島。39分、相手陣内でセカンドボールを拾った永畑が、そのままドリブルで持ち込みながら弾丸のようなミドルシュートを放つ。枠に飛んでいれば、というシーンだったが、シュートはわずかに右に逸れてしまった。今シーズン活躍の目立つ永畑だが、この試合でも縦横無尽にピッチを駆け回り、多くのチャンスに絡んでいた。

対する藤枝は41分、それまでなかなかつながらなかった前線へのパスが、高い位置で待っていたMF平石へ渡る。十分なスペースがあると見て取った平石は勝負を仕掛け、ペナルティエリア内へ切り込みながら左足を振り抜く。GKから逃げていくような変化をつけたシュートだったが、鹿児島の守護神・山岡が横っ飛びでファインセーブをみせる。こぼれ球へさらに藤枝の選手が走り込みシュートを放つが、これは大きく枠を外れゴールならず。

前半は互いに流れを掴みきることはできず、無得点のまま試合は後半へと向かう。

鹿児島・浅野監督は、中盤での奪われ方が悪かった点を修正するため、中盤のスペースをカバーできるよう、ディフェンスラインをより高くすることで全体をコンパクトにした。
藤枝・田中コーチは、よりシンプルにサイドのスペースを使っていくよう指示した。

後半に入り、まずチャンスを迎えたのは藤枝。パスワークからペナルティエリア内でマークが浮いていたFW三好にボールが渡る。
が、シュートは完全にミートすることができず、GK山岡がしっかりとキャッチ。山岡は、ピンチでの好セーブに加え、ハイボールの競り合いにもほぼすべて勝利。スローイングからチャンスを演出するシーンもあり、守備だけでなく、攻撃の起点としてもチームに貢献していた。

鹿児島は51分。藤本が前線で相手ディフェンスと競り合いながらも上手くボールを収める。そこから折り返したボールをMF中原が受け、ペナルティエリア内まで持ち込んでシュート。しかし、藤枝のGK三宅も止め返し、ゴールを割ることができない。そして、ここから60分頃までは藤枝のペースで試合が進むことになる。

藤枝は中盤でボールを奪うと、田中コーチの指示通り逆サイドのスペースへボールを送る。鹿児島はボールサイドに全体が寄り気味になるスタイルのため、逆サイドにスペースができやすい。藤枝の選手たちはカウンターでの動き出しが早く、複数の選手が一気にスペースへ入り込んでくるため、攻撃に厚みがある。一度跳ね返しても、セカンドボールを拾ってさらに波状攻撃をかける藤枝。鹿児島ディフェンス陣は体を張ったディフェンスでラストパスは通させないが、流れは藤枝へ傾いていた。

なかなか攻撃が繋がらず、相手にボールを持たれる時間が続く。この嫌な空気を断ち切ったのは、交代で入った選手たちだった。
61分、中原に代わり新中がピッチへ。新中はトップ下の位置から積極的にディフェンスの裏を狙って走りこんでいく。62分、カウンターのロングボールに合わせ左足でボレーシュート。ボールはゴール左へ外れたが、ゲームの流れを取り戻すきっかけになる予感がした。

そして、73分にFW川森が、82分にMF田上が投入されると、ついにゲームが動く。
83分、コーナーキックのチャンス。赤尾の高精度なボールが送り込まれるが、シュートには至らずボールがこぼれる。そのままボールはラインを割るかと思われたが、ただ一人反応していた田上が、身を投げ出しながらボールを中央へ折り返した。だが、パスを受けた冨成のシュートはポストに跳ね返される。ボールはゴールエリア内に転がっている。押し込むか、クリアか。

飛び込んだのは、途中交代で入った川森だった。

無人のゴールにシュートが突き刺さると、スタジアムは割れんばかりの歓声に包まれた。浅野監督が「ゴールを期待して投入した」という川森が、見事にその期待に応えて見せた。
藤枝はFW峯を投入し反撃を試みるが、鹿児島の激しいプレスは衰えることなく続き、最後まで鹿児島ゴールを脅かすことはできず、鹿児島が1-0で勝利し首位の座をキープした。

敗れた藤枝ではあったが、前節の長野とはまた違った形での鹿児島対策をみせ、鹿児島を大いに苦しめた。各チームがスカウティングを進めていくであろうこれからのシーズン、持ち味を封じられたり、ウィークポイントを突かれたりといった難しい試合が続いていくことだろう。それでも、苦しい試合を勝利で終われたことは、鹿児島にとって大きな財産となる。
「思い通りのプレーができない試合でも、粘り強く戦い続ければチャンスは来る」
そんなメンタリティがチームに備わっているように感じられる。

この試合、交代で入った選手たちが流れを変えるプレーを見せた。浅野監督も「新中、田上、川森の3人がチームにパワーを与えた」と高く評価している。ただ、浅野監督はベンチ入りした選手だけでなく、鹿児島ユナイテッドFCに選手登録されている27名全員が戦っていることを強調していた。
プレーできるのはその時ピッチに立っている11人だけだ。しかし、試合に出ていない選手たちもそれぞれの形でチームに貢献している。そして、いつでも試合で活躍できるだけの準備を常に整えている。チームの全員にその共通意識があったからこそ、交代でピッチに立った選手たちも違和感なく試合に入ることができ、チームを鼓舞し、試合を決めるプレーをすることができたのではないかと思う。これは、負傷欠場した選手に代わって出場している選手たちも、皆優れたパフォーマンスを発揮し続けていることからも窺うことができる。こういうチームは大崩れすることが少ない。

苦しい試合ではあったが、結果以上に勝ち得たものは大きい。これからのシーズン、まだまだ多くの困難が待ち受けているのは間違いないが、それでもこのチームなら乗り越えていけるはず。そう感じさせてくれる試合だった。

浅野哲也監督(鹿児島)

今日も沢山のサポーターの方に来て頂いて本当に熱い声援を送って頂けたこと、本当に毎試合ですけど本当に感謝を申し上げます。前節に引き続き苦しいゲームでした。藤枝さんは4バック、3バックと使い分けて、これまでの試合では相手と同じシステムで戦ってくると、そういうゲームだったんですけど、我々に対しては、もしかしたら前節、我々が長野に苦しんだ、そういうシステムを採用してきたのかな。ただ戦い方も長野さんのような、はっきり前に早く送るというよりも、しっかり繋いでくるというチームなので、我々の守備の所で、もう少し長野さんとの試合よりは前でボールが奪えるのかなと思いましたけれども、また少し攻撃の所で奪われ方が悪くて、スペースの空いている所に相手選手が入り込んで、守備への切り替えのところがあまりコンパクトに出来なかったのかなと、それが前半でした。後半はその辺りを修正して一番前と一番後ろの距離をもっとコンパクトにしようと、奪われ方を気を付けようという形で臨んだんですけど、顕著に大きな修正にはならなかったんですけど、その中で辛抱強く選手たちが戦ってくれたかなと思います。新中・川森・田上と交代で入った選手がものすごくパワーを出してくれて、間違いなくそのパワーがそれまでピッチにいた選手に移って、最後まで足を他の選手も動かして、そういう雰囲気にしてくれたのかなと思います。僕の中ではMVPは田上かなと思ってます。ああいうキャプテンの姿勢というのは間違いなく今後に繋がっていくと思いますし、終わり方としては良かったかなと思います。ただ、前節に引き続き、ああいう形で攻めてくる相手に対して我々の守備がなかなか機能しなかったという所では、次節どうのというよりも、我々がリーグを戦っていく上でもっとトレーニングしなければならないかなと改めて感じました。ただ本当に、毎試合選手たちは戦ってくれてしっかり頭と体を動かして今日も勝ち点3を取ってくれたこと、そして、0に抑えてくれたこと本当にありがたいと思います。

   

田中遼太郎監督代行(藤枝)

今日のゲームは立ち上がりから非常に鹿児島さんの勢いのある攻撃に後手に回る時間が多かったと考えます。ただその中で、選手たちは前後半通して非常に良く我慢してピッチの中でもキャプテンの福王を中心によく声をかけながら凌いでくれたと、そういう風に思います。ファンやサポーターの方もこの遠く鹿児島という場所で非常に最後まで力強い声援を送ってくれましたし、そこに結果という形で恩返しが出来なかったのは非常に残念に思います。ただ、ハーフタイムに入るところでは、セカンドボールのところ、もしくは攻撃のところでもっとシンプルにサイドを使っていこうというところを確認しました。後半に入って少しそういう意識は出たものの、やはり今シーズン通して苦しいゲームをしっかり最後まで無失点で乗り切る力であったり、そういうゲームの中で逆に勝ち点を勝ち点3をもぎ取るという逞しさはまだまだこれから伸ばしていかないといけないなという風に感じる部分です。ただ、課題が多いことは次に向けてのチャレンジできるものだと思いますので次に向けてまたしっかりと静岡に帰って準備をしたいと思います。

   

山岡哲也選手(鹿児島)

前節、引き分けで終わって勝ち点2を失って、正直やっぱり悔しい気持ちの方が大きくて、無失点でしたけど喜ぶことが出来ずに。でも今節、チームですごくまとまって勝ちに向けて努力した結果が、ああいう結果になって、すごく嬉しかったですし、無失点で終われたのもまた良かったので、またこれをしっかり続けれるように準備をしていったらいいと思います。自分はちょっとしか仕事してないですけど(笑)でも、無失点で終われたことは、他の出ているメンバーもそうですし、出れないメンバーも皆で勝ち取った無失点でしたし、皆で勝ち取った1点だったという所はすごく成長してる面でもありますし、それを続けていけるように頑張りたいと思います。一試合を通じてピンチの場面はあると思うので、攻撃をしている時だったり、僕らのCKとかの時に声掛けをして、もう一回集中しようということを一試合を通してずっと言えていたので全然怖くはなかったですし、守れるなという自信はありました。それが点に繋がったり、相手に脅威を与えられるぐらいのプレイが出来たなら良かったですけど、しっかりまずは守備からという気持ちなんで、そこはまた機会があればアシストなども狙っていきたいと思います。本日も応援ありがとうございました。また次節もしっかりチームで勝てるように頑張るのでまた応援よろしくお願いします。

五領淳樹選手(鹿児島)

最初チャンスを作れた形があったんですけど、その後、やってはいけないことではないですけど、失ってはいけない所でのミスだったりもあったりして、ちょっと迷惑を掛ける部分もあったんですけど、その分切り替えという所では徹底してやれてたんで、そこは良かったかなと思ってます。今日も沢山の人が来てくれたので、どうにか勝ち点3を届けたいという想いはあった中で、僕はゼロゼロの状態で交代したんで、ホント頼むぞていう状態だったんですけど、(川森)有真が決めて くれて良かったです。ここ最近の試合、秋田もそうだし長野もそうだったんですけど、サイドが高い位置とってくるチームを経験してたのがすごい自分たちにとっては大きくて、あんまり嫌な感じも無く、うまく僕だったり(中原)優生だったりがしっかり対応したのかなと思いますけど、もう少し攻撃に転じた時に、僕も優生ももっとエネルギー出して前に前にいければ、もっと相手は嫌だったのかなというのは思います。次は反省も踏まえて得点に絡みたいと思います。本当に毎試合、ホームっていう雰囲気をすごい多くの方で作って下さって、すごい僕らも力もらってますし、アウェーでも本当に多分来れない方もすごい応援してくれてるていうの伝わるので僕らは常に勝ち点3を狙ってやり続けるしかないなという想いです。

  • 鹿児島・浅野監督。苦しいゲームをものにして首位の座をキープした。
  • 大石監督に代わって指揮を執った田中コーチ(藤枝)。敗れはしたが、チームを支え戦い抜いた。
  • この日も開催された「スタジアムde縁日」。多くの家族連れでにぎわっていた。
  • 募金活動には井上選手、寺田選手、植田選手が参加。毎試合の活動を続けている。
  • 沖縄観光PRブースが出店。次節、アウェイFC琉球戦のチケットや、FC琉球グッズの販売も行われた。
  • 今注目の「ユナ女」の皆さん。手作りうちわで選手を後押しし、勝利の女神となった。

Reported by 川畑究無



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