〔九蹴日記〕鹿児島:「堅守・鹿児島」復活へ。J3屈指のセンターバックが相手エースを封殺する。(水本勝成選手:鹿児島)

  • 鹿児島の堅守を支え続ける水本勝成選手。相手エースを封じ込め、鹿児島を勝利へと導く。

2016年5月22日、J3第10節、アウェイFC東京U-23戦。
この日、東京の3トップは、ネイサン・バーンズ、ユ・インス、そしてムリキ。攻撃陣に関して言えば、今シーズンJ3最高レベルのメンバーが名を連ねていた。
44分、東京にチャンスが訪れる。カウンターのスルーパスから、ネイサン・バーンズがペナルティエリア近くでボールを受ける。ここでマッチアップしたのは、鹿児島ユナイテッドFCのCB水本勝成だった。

この場面について水本選手は次のように振り返る。
「スルーパスで抜け出されて、僕が追いかける局面的にかなり不利な状況だったので、キーパーを含めて守ろうと考えてました。シュートを打たれてもニアに打たれるように切りながら、『中に切り返して来たらラッキーだな』くらいの感じで寄せてましたが、両方イメージはしてました。
たぶん最初にスライディングしてたら中に躱されてたと思うんで。やっぱりJ3、J2はそういうレベルだと思います。こういう局面で相手に負けないことがチームの勝敗に関わってくるので、そこは負けないようにしていきたいです」

起こりうる様々な状況を想定しつつ、バーンズ選手の仕掛けに備えていた水本選手は、突如スピードアップして内へ切り込んでくるバーンズ選手の動きにも即座に反応。一瞬シュートコースを作られたかに見えたが、シュートが放たれるタイミングを見計らっていたかのように、水本選手は飛び込みながら右足を伸ばし、完璧にシュートをブロック。
高々と宙を舞うボールと、天を仰ぐバーンズ選手。
決定的なピンチの場面で、水本選手はオーストラリア代表FWとの駆け引きに勝利して見せたのだった。

水本勝成選手は、鹿児島ユナイテッドFCの前身、FC KAGOSHIMAから数えて鹿児島での4シーズン目を迎えている。
JFL時代からディフェンス陣の中心として、体を張ってゴールを死守してきた。

水本選手は、とにかく「良く走るセンターバック」だ。誰よりも早く危険を察知し、全速力でボールに寄せる。スピード自慢の選手にもスプリントで負けない。ギリギリの場面では、体を投げ出してでもボールをクリアする。チームの為に自らを犠牲にしているのではないかと思えるような、全身全霊を込めたディフェンスには感動すら覚える。

そんな水本選手の真骨頂は、相手FWとの「駆け引き」にある。これまで、数々のチームのエースストライカーたちと対戦してきた水本選手。高さのある選手、パワーのある選手、スピードのある選手・・・相手にも様々なタイプがあり、またそれぞれに異なる特徴を持った選手たちと戦ってきた。「最初は相手の特徴を掴みながら、駆け引きしながら、相手の特徴を消せるプレーを考えながらやっています。その中で自分のいいところを出せればいいかなと」
試合の中で相手の武器を探り、その持ち味を奪いながら、自分のストロングポイントを出していく。簡単なことではないが、それを実践できてしまうところに、ディフェンダーとしてのレベルの高さを感じる。
実際、試合序盤に押し込まれても、水本選手が徐々に相手エースを封じていき、いつの間にか守備が安定している、という場面を度々目の当たりにする。

この一対一でのハイレベルなディフェンスに加えて、チームでの組織的な守備がしっかりと浸透していることが、鹿児島の堅守を形作っている。「お互いに良いところも悪いところも知っていると思う」という田中秀人選手とのセンターバックコンビや、攻撃参加を持ち味とし、常に上下動を繰り返す冨成選手、関選手の両サイドバックとの連携が光っており、お互いにフォローし合う関係が上手く噛み合っている。

また、GKとの連動した守備というのも、欠かすことのできない要素のひとつだ。
「しっかり守れている時っていうのは、GKとのコミュニケーションが自然ととれてて、僕たちがしっかりシュートブロックしたり、コースを限定してキーパーが止めたりというのがしっかりできています。ピンチに見えて誘い込んでるというか、自分たちはやられる気がしない感じで前半戦はやっていました。後半戦になって球際の部分だったりボールの寄せだったりというのが遅くなって、キーパーの守備範囲も広がって、そこで失点してるというのがちょっと多いので、キーパーのためにも、コースを切ってあげたり、キーパーが楽に止めれるような守備をやっていきたいです」

たしかに、今、鹿児島の堅守に若干のほころびが見えているのは事実かもしれない。90分間を通して粘り強い守備を続けてはいるものの、一瞬の隙を突かれての失点が続いている。
「前半戦はチームも好調を維持して、途中は1位にもなりましたが、後半戦がはじまって、相手もたぶんうちのことは研究してきて、そこでなかなか自分たちの良さを出せず、結果が出てないという状況なので、そこは相手に研究されても、自分たちのサッカーを貫いて結果を出していかないと上には行けないのかなと感じています。うちのチームにはJリーグ経験者っていうのもそんなに多くないですし、みんなが組織として相手に立ち向かっていかないと勝てないと思います。チーム一丸となるような声かけだったり、年齢関係なしに、若い選手がどんどん積極的にプレーしたりとか、ベテランの人が若手に対して『ああしろ、こうしろ』とか言うんじゃなくて、『こうしたらいいんじゃない』っていう前向きな声かけをしていくことが、若手の成長にもつながると思うので、そういうのをやっていけたらいいかなと思います」

楽観するでもなく、悲観するでもなく、今チームにとって何が足りないのか、これから何が必要なのか。若手の成長といった、将来も見据えて冷静に分析する水本選手。熱いハートと冷静な頭脳を兼ね備えた、彼の存在の大きさは計り知れないものがある。

「良い守備から良い攻撃」を掲げる鹿児島。そこでまず大切なのは「良い守備」だ。不安定な守備から良い攻撃は生まれない。得点を奪い、そして勝利するためには、堅守復活は至上命題と言えるだろう。困難な道にも思えるが、それでも、彼がいれば成し遂げられる。そう思わせてくれる。

相手エースを封殺する、水本勝成選手から目が離せない。

   

   

  • 「最近はちょっとお客さんの数も減ってきてて、それはたぶん、僕たちの結果が伴ってないのが原因のひとつでもあると思うので、そこはしっかりと勝って鹿児島ユナイテッドFCという存在をもっと鹿児島県民、全国の皆さんに知ってもらえるように勝ちにこだわってやっていきたいと思います」と、サポーターへのメッセージを送ってくれた水本選手。鹿児島の巻き返しに期待しよう!

Reported by 川畑究無



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