〔J3第23節:鹿児島vs.F東京U-23〕レポート:大量失点の悪夢を振り払う完封勝利。次節、昇格圏を争う大分との直接対決へ。

  • 後半からの出場で決勝点をアシストした新中剛史選手(鹿児島)。攻守に渡ってチームを活性化させた。
  • 明治安田生命J3
  • 第23節
  • 鹿児島
  • F東京U-23
  • 76分藤本憲明(鹿児島)
  • 鹿児島県立鴨池陸上競技場
  • 2016年9月25日16:00

この試合、「鹿児島は前節の大量失点のショックを乗り越えられるか」という点に、多くのファン、サポーターの注目が集まっていたのではないだろうか。
前節、ガンバ大阪U-23から悪夢のような6失点。試合前の選手たちの表情は明るく、監督からも「切り替えた」というコメントはあったものの、あの試合のイメージを払拭するためには、やはりプレーと結果で示す以外にない。

鹿児島ユナイテッドFC、浅野哲也監督は、今節を迎えるにあたって「チームのあり方を見つめ直す」ため、前節のメンバーに代えて経験のあるDF田中秀人、MF高野光司を先発に起用。まずは粘り強い守備から、前半を失点ゼロに抑えることを目標に試合に臨んだ。
対するFC東京U-23、中村忠監督は、アグレッシブな守備とボールをゴール前に素早く運ぶ攻撃で勝利を目指す。試合開始直後は、このコンセプト通りの展開になった。

東京のキックオフで始まった前半、鹿児島はいつも通り前からプレスをかけに行こうとするが、東京攻撃陣のパス回しに掻い潜られ、上手くプレスの網にかからない。東京はボールを保持しながら、平岡翼のスピードやユ・インスのテクニック、水沼宏太のクロス等からチャンスを作っていくが、鹿児島は水本勝成を中心に攻撃を食い止め、シュートまでは持ち込ませない。

序盤は東京のチャンスが続き、18分には林容平がディフェンスラインの裏へ斜めに走りこみながら、ゴール前でボールを受けシュート体制に入る。だが、ここは鹿児島・田中がこのシュートをブロック。この試合最大と言っても良いピンチを切り抜けると、プレスがかかりにくいと見た鹿児島は守備を修正。無理にボールを奪いに行こうとはせず、きっちりとブロックを敷いて東京の攻撃に対処していく。これが功を奏し、東京にポゼッションを許す時間帯はあっても、ほとんどシュートチャンスは作らせず、鹿児島は前半、東京のシュートを林の放った一本のみに抑えてみせた。

ただ、鹿児島の方も前半は中々決定的な形を作れない。東京・中村監督は「非常に危ない選手だから気を付けよう」と鹿児島のエース・藤本憲明を徹底マーク。藤本にボールが入るタイミングが少なく、前線に溜めができにくいため、どうしても攻撃に厚みが出てこない。また、最終ラインからの攻めにはややスピードを欠き、東京守備陣を崩すまでには至らない。両サイドの五領淳樹、永畑祐樹の仕掛けからチャンスが生まれる場面はあるが、ゴール前に人が足りず、こちらもシュートまで持ち込めない時間が続く。

それでも、先に得点機を迎えたのは鹿児島だった。この日もキャプテンマークを巻いた、頼れる副キャプテン、赤尾公が魅せる。37分、中盤でボールをキープすると、ディフェンスの裏へ抜け出す五領へ絶妙なタイミングで浮き球のスルーパス。ここからのクロスは惜しくもシュートにはつながらなかったが、続く38分、赤尾から逆サイドでフリーの永畑へ高精度のサイドチェンジが届く。そこからのパス交換で中原優生がボールを受け、裏へのパスに藤本が飛び込み、ゴール前フリーでボールを受ける。藤本のシュートは惜しくもゴール右へ逸れていったが、この試合初めての決定的チャンスにスタンドも湧き返る。

しかし、東京も反撃。39分、素早いパス回しから何度もクロスを放り込み、波状攻撃で鹿児島ゴールを脅かす。鹿児島はこの攻撃を跳ね返すと、五領が自陣深い位置で相手のパスをインターセプト。この時間帯、やや前掛かりになっていた東京ディフェンスの隙間を切り裂き、一気にゴール前へドリブル突破。さらにペナルティエリア前で勝負を仕掛け、ディフェンスをかわしながら左足を思い切り振り抜く!
唸りをあげるようなシュートが東京ゴールを襲うが、ボールはバーを直撃しこれもゴールならず。

前半はお互い得点を奪うことができず、スコアレスで試合を折り返した。鹿児島としては「前半を失点ゼロに抑える」という目標は達成したことになるが、後半は果たして・・・。

前半、やや押し気味に試合を進めながらもシュートチャンスが作れなかった東京は、攻撃のバリエーションを増やすべく平岡、林に代えてベテラン石川直宏と小林真鷹を投入。
逆に決定機を作りはしたが押され気味だった鹿児島は、中原に代えて新中剛史をピッチへ送り出す。後半に向け、浅野監督にはある思惑があった。
前半、攻撃のスピードが遅く、相手の脅威になる攻撃が中々繰り出せなかったこと、藤本がボールを受ける機会が少なかったことを踏まえ、浅野監督は「ディフェンスの裏を積極的に狙うこと」と「ボールを奪ったらまず前を向くこと」を指示。泥臭くてもシンプルに、素早くゴール前へボールを運ぶことを選択したのだ。ワントップだった藤本を中原のいたトップ下の位置に下げ、そのワントップの位置に新中を投入。スピードとディフェンスラインとの駆け引きに優れた新中が入ったことで、鹿児島の攻撃は一気に活性化された。
後半開始直後からボールを保持する鹿児島が、次々にチャンスを作り出していく。
鹿児島は、後半に入るとディフェンスがさらに修正されており、ディフェンスに行く時、行かずに我慢する時の判断が良く、迂闊に飛び込むことがない。ボールを奪われた直後や相手のボールキープが安定しないタイミングでプレスに行き、上手く相手を挟み込んで、高い位置でボールを奪うことで攻撃権を握り続けていた。

このプレスがはまらなかった時やカウンターからはピンチを迎える場面もあったが、関光博らディフェンス陣の見事なインターセプトが光り、決定的な形は作らせない。

試合も終盤に差し掛かると、運動量で鹿児島が東京を上回り始める。セカンドボール争いで鹿児島が競り勝つ場面が増え、70分に田上裕が登場すると、その勢いはさらに増してくる。
直後に獲得したセットプレーでは、五領のミドルシュートのこぼれ球を新中が押し込んで先制・・・したかに見えたが、オフサイドの判定でこのゴールは認められず。しかし、この後ゲーム最大の見せ場が訪れる。

76分、「まず前を向く」「裏を狙う」の2点を忠実に実行した鹿児島は、ボールを保持するとすぐに東京ディフェンス陣の裏へロングボールを送る。そこを狙っていた新中が左サイドでボールを受け、そのままゴール前へ。
東京は守備陣形がまだ整っておらず、ゴール前は手薄だ。ここを逃す手はない。

新中がペナルティエリア左にボールを持ち込む。相手ディフェンスも必死に食らいついており、このままゴール前へ切り込むのは難しいか。
だがその時、ゴール前に紺色のユニフォームが見えた。藤本だ。
「(新中)剛史さんが抜けた後のサポート」を意識していたという藤本は、新中が裏へ抜け出した時にはすでに反応し、ゴールへ向かって走り出していたのだ。

新中がゴール前へグラウンダーのパスを送る。後は、当てるだけだった。キーパーの股を抜くシュートがゴールへ吸い込まれると、藤本はゴール裏で待つサポーターの下へ駆け寄り、喜びを分かち合った。
待望の先制点を奪った鹿児島。あとは無失点でゲームを締めるだけだ。田上は気迫に満ちた守備でクリアボールも簡単には蹴らせない。終盤交代で入った山田裕也も、全力でプレスを仕掛け東京に攻撃の形を作らせない。
前節の大量失点を吹き飛ばすような盤石の守備で、鹿児島が完封での勝ち点3を得る結果となった。

「本当に我々らしい90分だった」
試合後、浅野監督は鹿児島のスタイルを貫き通せたことに手応えをつかんだようだ。
前節と今節では対戦相手が異なるため、簡単に良し悪しの比較はできない。それでも、前節の敗戦を引きずっていないこと、鹿児島の、浅野監督のサッカーを最後まで貫いていけることを、選手たちは自らのプレーで示してくれた。

今節、2位大分が引き分けたことで勝ち点では並ぶことができた。次節、アウェイでの直接対決に勝利すれば、鹿児島が単独2位に浮上することになる。
J2昇格圏内に入るためには絶対に落とすことのできない大一番だ。その試合を前に、自分たちらしいサッカーで勝利を掴み、自信を取り戻すことができた事実は大きい。

次節は今シーズンで最も厳しい戦いになるかもしれない。大分は一年での昇格を「自ら義務付けている」と言ってもいい相手だ。並々ならぬ覚悟と執念で勝利をもぎ取りに来るだろう。
お互いに必死で勝ちに行くのだ、どんな結果になるかは分からない。
だが、鹿児島の選手たちは誇りを持って、前を向いて、必ずや最後まで戦い抜いてくれるはずだ。
最後の笛が鳴る、その瞬間まで。

浅野哲也監督(鹿児島)

今日は本当に我々らしい90分だったなと思います。
前半、相手のスキルに少し戸惑いもあったし、なかなか我々の時間ができなかったんですけど、そこで選手たちがピッチの中で判断をして、無理に捕りにいかないところと、プレッシャーをかけるところという風な使い分けを上手くやってくれました。押し込まれる場面も当然あったんですけど、よくクロスも跳ね返してくれたし、得点というところでは、前半は中々そういうシーンは作れなかったんですけど、前半をゼロで抑えていくという我々のスタイルが上手くはまって、後半のチャンスに活かせたのかなと思います。
前回アウェーであれだけやられて、もう一度試されていると、神様が試しているという風に、今日のゲーム前のミーティングで選手たちに言って、ここで強さを見せないと先がない、もっと上のカテゴリーには上がれないよという話をしたんですけど、今日ピッチに立った選手だけではなくて、我々チーム全員がこの試合に向けてやって来れた結果が1-0という我々らしいスコアで勝利を飾れた要因かなと思います。今日の試合はこれで終わりなので、次またさらに、もしかしたら今シーズン一番厳しい戦いが待ってます。ただ、我々は今こういう強さを取り戻して、大きな相手に対して立ち向かっていく。また良い準備をして、我々らしいサッカーでしっかり90分戦っていきたいと思います。

ハーフタイムコメント

守備はじっくり我慢して対応すること

横ずれ及びセカンドボールの反応を早くすること

相手DFの背後を積極的に狙うこと

ホームで必ず勝ち点3を獲ること

中村忠監督(F東京U-23)

今日は鹿児島というところまでサポーターが東京から来てくれていたので、本当に申し訳ないゲームはできないという気持ちで試合に入りました。
前節勝利したんですが、今日はまた違ったメンバーで試合を行うにあたって、少しチームとしてコンセプトを持ちながらというところと、いつも通り個人の力をそれぞれがアピールしてJ1の舞台に行くっていう気持ちで試合に臨みました。前半立ち上がりからアグレッシブに行ってゴール前にボールを供給しよう、アーリークロスとか裏へのボールで主導権を握ろうというところで、立ち上がりは悪くなかったと思うんですが、やはりその後ちょっと単純な攻めになってしまったり、ミスが多くて中々うちの時間帯っていうのが作れずに、後半メンバーを代えて、もう少しポゼッション率を高めよう、しっかりとボールを動かしながら攻撃しようっていう話をして入ったんですけど、選手は本当に意識は持ってくれたとは思うんですが、中々プラン通りにはいかず先に点を獲られてしまって。最後もう少し点を獲りに行くっていうところを魅せたかったんですが、今日のこういうコンディションも含めて、最後足が止まってしまって、0-1で終わってしまったという形になってしまいました。

ハーフタイムコメント

攻撃のバリエーションを増やそう

守備のポジショニングを確認しよう

最後まで走ること

藤本憲明選手(鹿児島)

2連敗は絶対したくなかったんで、負けた後の試合っていうのはみんな大事にしてたと思うんで、気合いの入ったゲームができて、前半はけっこう耐える場面があって、得点するチャンスもあったんですけど、ゼロで抑えられて。
後半も粘り強い守備からカウンターで(新中)剛史さんが裏に抜けて良いパスをくれて、後は決めるだけだったんで、サポーターの皆さんに喜んで頂けて、僕も嬉しかったです。前の試合のことはもうその日のうちに切り替えて、次の練習の時にはみんな元気な顔で練習できてたんで、連敗しないっていう強い気持ちがあったので勝てたと思います。前半はけっこう裏へのプレーが多かったんですけど、剛史さんが入って、剛史さんに前の部分は任せて、僕はちょっと中盤らへんでセカンドボールだったり、剛史さんが抜けた後のサポートっていうのを意識して、その結果あの得点が生まれて、理想通りのゴールだったって言ったらあれなんですけど、良いゴールだったと思います。前半は守備で動かされてた部分もあったんで、後半は前から良いプレスもかけれてたと思うんで、良い守備から良い攻撃っていうテツさん(浅野哲也監督)のサッカーが良く出たと思います。

関光博選手(鹿児島)

前節結構失点してしまって負けたんで、今回ホームですし、とにかく失点ゼロで抑えるっていうことと、勝つことを意識して守備しました。ちょっとしたことだと思うんですけど、ポジションの修正とか、首振るタイミングとか、体の向きとか、ディフェンスとしてやらなきゃいけないことをしっかりやれたっていうことと、チーム全員が同じ意識でやれたことが良かったのかなと思います。
本当はもっと攻撃したいですけど、まあでも、ディフェンスがしっかりすると攻撃もチャンスが出てくるし、うちは何本も何本もパスを回して点を獲るっていうプレースタイルじゃないんで、別に相手がパスを回そうが、焦ることなく自分たちのペースでディフェンスして攻撃してっていうのができていたのかなと思います。あんまり他のチームがどうこうとか、勝ち点がどうこうっていうのはあんまり意識しないようにして、一戦一戦しっかり戦って、勝ち点を積み上げて、その結果優勝できればいいかなと思います。

五領淳樹選手(鹿児島)

本当だったら前半からもうちょっと前からプレスをかけたかった部分もあるんですけど、その悪い時間もしっかりみんなで粘って、最後の部分をやらせなかったっていうので、0-0で後半を迎えられたのが大きかったかなと思います。仕掛ける部分は意識してやれてて良かったんですけど、最後の部分のクロスであったりシュートっていうのを、しっかり合わせたりゴールに入れたりっていうのを、もっとこだわってやっていかないといけないなと思いました。
次節はすごい面白いシチュエーションだと思いますし、選手としてもすごいやりがいのあるシチュエーションなんで、個人的にずっと大分っていうのは意識している部分があるので、絶対に負けたくないですし、アウェーですけど、ホームかのようにサポーターも来てくれると思うんで、絶対に僕らはその期待に応えられるように頑張りたいと思います。

  • 会場では、台風16号により被災された方々のため募金活動が実施された。
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  • 晴天に恵まれた鴨池陸上競技場。3700人を超えるサポーターが試合を見守る。
  • 交代策が見事にはまり1-0での完封勝利をものにした、鹿児島・浅野哲也監督。次節は勝ち点で並ぶ2位大分との直接対決が待っている。
  • 前節からメンバーが入れ替わった中勝利を目指した、F東京U-23・中村忠監督。鹿児島のエース、藤本選手について「決めるべき時に決められる選手」と評価した。

Reported by 川畑究無



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