〔J3第25節:鹿児島vs.秋田〕レポート:山田の劇的決勝ゴールで価値ある勝利。2位大分と勝ち点で再び並ぶ。



  • 得点を期待されての投入に見事応え、この日のヒーローとなった山田裕也選手(鹿児島)。得点シーン以外にも素早い動き出しでチャンスを作っていた。
  • 明治安田生命J3
  • 第25節
  • 鹿児島
  • 秋田
  • 71分山田裕也(鹿児島)
  • 鹿児島県立鴨池陸上競技場
  • 2016年10月16日13:00

鹿児島ユナイテッドFCのJ2ライセンス不交付が発表されてから初めてのホームゲーム。
今節から、J2ライセンスの要件を満たす新スタジアム建設を願う署名活動がはじまり、サポーター有志の協力のもと訪れた多くの観客が署名を行っていた。これからさらに多くの署名を集め、スタジアム建設へ前進していくためにも、鹿児島ユナイテッドFCというクラブに支援する価値があるということを結果で示していかなければならない。たとえJ2昇格ができないとしても、一つでも上の順位で、いや、優勝を目指して戦っていかなければならないのだ。
ゴール裏の横断幕には「今日、勝利する意味 鹿児島の挑戦は続く 俺達と共に闘おう!」の文字が。
今節はまさにそんなゲームだった。

対戦相手であるブラウブリッツ秋田は、3位鹿児島と勝ち点差3の4位。ここで負ければ優勝争いから転落するばかりか、5位富山の結果次第では5位まで順位を下げる可能性がある。首位栃木との勝ち点差は5。残り試合数を考えても、これ以上離されるわけにはいかない。だが、試合序盤からペースを握ったのは秋田の方だった。
3-4-3で試合に臨んだ秋田は、3トップや両サイドハーフの選手らがボールを追ってGKまでプレッシャーをかけ、鹿児島に攻撃の形を作らせない。また、普段であれば丁寧につないでいくことが多いところを、鹿児島のプレスを警戒してか、中盤を省略してディフェンスの裏を狙ったロングボールを放り込んでくる。裏狙いを食い止めても、前線でボールをキープすると、3トップの残り二人が追い越す動きでボールを受け渡しシュートチャンスに持っていく。両サイドの比嘉と青島は積極的にドリブルで仕掛け、サイドから鹿児島守備網を切り裂いていく。
前半15分頃までは秋田が試合の流れを握っているが、鹿児島もあわてることなく対応を続け、決定的なピンチを招くことなくこの局面を乗り切っていく。

これまでは、こういう押し込まれる展開になったとき、鹿児島の両サイドハーフが相手の圧力に押されて低い位置に入ってしまい、相手に攻めの起点を作られてしまう上に、こちらが攻めに転じた時に切り替えが遅くなり、人数をかけて攻め上がれなくなってしまうため、そこからさらに分が悪くなっていくケースがあった。だが、この日は相手の圧力に負けることなく、両サイドの五領、永畑は高い位置を取り続けていた。そして一度ボールを奪うと素早くカウンターを仕掛ける。秋田は前線に人数を割いている分、体制が整う前に中盤を突破することができればチャンスも巡ってくる。
26分、そのカウンターから鹿児島にチャンスが生まれる。中盤で相手を背にした中原がボールを受けながら反転して相手を抜き去り、3バックの間のスペースを突いた見事なスルーパス。そこへ走りこんだのは藤本。これは決定的かとも思われたが、秋田ディフェンスに右サイドへ追い込まれ、角度のない位置からのシュートを余儀なくされる。キレのあるキックではあったが、これは秋田GK松本が右足を伸ばして弾き出す。

直後の29分、今度は五領が魅せる。秋田陣内の右サイド深い位置でボールをキープすると、二人のマークをものともせず巧みなフェイントで突破。結果的にはファウルで止められ得点にはつながらなかったが、この場面以外にも五領の仕掛けからチャンスが生み出されており、間違いなく相手の脅威となっていた。

序盤は秋田の攻撃に翻弄された鹿児島だったが、その後は守備も徐々に安定。前線からパスコースを限定しながらボールホルダーを追い詰めていくと、秋田は裏へのタイミングのいいロングボールを供給できなくなってくる。この中で光ったのは、今期初先発となったMF西岡。タイのアーントーンFCから加入したボランチは、「久しぶりに組んだ」という赤尾とのコンビで躍動。冷静なカバーリングと機を見たインターセプトで攻撃の芽を摘んでいく。

お互い見せ場は作りながらも、ゴールには結び付けられず前半が終了。序盤は秋田が、終盤は鹿児島が攻勢を見せたが、まだ勝負はどちらに転ぶか分からない。
後半に入ると、両チームともセットプレーから決定機が生まれるが、どちらもわずかにゴールマウスに嫌われてしまう。前半同様一進一退の攻防が続くかと思われた56分、大きな転機が訪れる。
果敢にスライディングでボールを奪いに行った秋田・比嘉が、この日2枚目のイエローカードで退場となってしまったのだ。間瀬監督(秋田)は「秋田のため、チームメイトのため、自分のために、全力で戦った結果」と受け止めたが、互角の勝負を繰り広げる中での数的不利は痛い。

失点すれば引っくり返すのは難しいとみた秋田は、システムを5-3-1に切り替え、確実に守って速攻から活路を見出そうとする。数的優位に立った鹿児島だが、こういう割り切った戦い方をされると逆に攻めづらい。「攻めやすさ」という点に関してだけ言えば、秋田が11人だった時間帯の方が良かったのかもしれない。
この展開を受け、先に動いたのは鹿児島・浅野監督。一人少ない相手に対し、トップ下の中原に代えてFW山田を投入。藤本、山田の2トップに、中盤をダイヤモンド型にしてボランチの赤尾を前へ出すことで、より攻撃を重視した形をとり、得点を奪いに行く。そして、その効果はすぐに表れた。
71分、コーナーキックからのクリアボールを拾った水本がクロスを入れ、田中が合わせたボールの先には、山田がいた。
ストライカーの嗅覚か、天性の勘か、これまでのキャリアで培われたポジショニングと駆け引きか。そのゴールを、山田自身「覚えていない」という。それほどまでに、記憶に残らないほど極限まで集中力が高まっていたのだろう。その左足から放たれた渾身のシュートが、秋田ゴールに突き刺さった。

5バックで守備を固めた相手を打ち崩す、価値あるゴールで先制した鹿児島。こうなると秋田は出ていかざるを得ないが、前線に人数をかけていないためプレスがうまくかからない。ここで勝負あったか。
しかし、間瀬監督はまだあきらめてはいなかった。32分から立て続けに3人交代し、システムを4バックと3トップに変更。中盤を省略しつつ前線に人数をかける。これ以上失点はしない、だが同点、逆転への望みも捨てない。そんなメッセージが伝わってくるような交代だった。
それでも、鹿児島も最後まで集中を切らすことなく、秋田に決定機を作らせないまま試合終了。
鹿児島が大きな意味を持つ一勝を掴み取った。

互いに勝つために死力を尽くした試合だった。
今節、2位大分が敗れたため、勝ち点で再び並んだ。首位栃木との勝ち点差は5のままだが、残り5試合、まだまだ可能性は残っている。ファン、サポーターは鹿児島ユナイテッドの未来を信じ、署名活動をはじめとしたサポートを続けている。苦しい戦いは続くが、鹿児島をもっとひとつにするため、チームもサポーターも最後まで全力で戦い抜くのみだ。

浅野哲也監督(鹿児島)

残り6試合、ホームゲームは残り3試合ということで、アウェイも当然勝ち点3を獲らないといけないいんですけども、絶対にホームでは勝ち点3を獲りたいと。一週間空いてこの準備期間に、前回の大分とのゲームから、我々らしいリバウンドメンタリティを出してくれたなと思います。ゲームの方は秋田さんも力のあるチームですし、すごく自分たちのスタイルで戦ってくる相手でしたけれども、若干今日はいつもより後ろでつながずに、特に序盤は速く前に放り込んできて、もしかしたらこれはうちに対してやや戦術を変えてきたのかなという風に思います。その時間帯でも、ボールは我々のゴールの付近にきましたが、もちろん相手の退場もあって数的優位な状況でしたけど、しっかり粘り強く、全員が意識を持って失点をせずに防げました。前回のホームゲームと同じくらい我々らしい戦いができたのかなと思います。できればもう一点獲って残りの時間をもう少し楽な展開にしたかったのは当然なんですけど、厳しいゲームが続く中でしっかりゼロで抑えて、最も我々のスコアらしい結果を残してくれたという風に思います。また今日のゲームはこれで終わりなので、明日からまた次の相模原戦に向けて、このところアウェイでなかなか結果が出せていないので、しっかり勝ち点3を獲ってまたこの鴨池に帰ってきたいと思います。

ハーフタイムコメント

前から限定しながらプレスをかけていくこと

球際のせめぎ合いに負けないこと

最後まで集中すること

間瀬秀一監督(秋田)

まず時系列でいうと試合前、ホテルで選手たちとミーティングをしました。そこでの話の内容は、J2ライセンスを持っているチームが上位に二つ、そして3位が鹿児島、4位が秋田、そしてそのすぐ下にまたJ2ライセンスを持っているチームが二つ。今日の鹿児島対秋田の試合は、秋田県対鹿児島県の試合だったと思います。そういう意味では自分たちは日本代表が日本代表のユニフォームを着るように、秋田県代表のユニフォームを着て、今日はしっかりと試合に勝つと、そういう思いで試合に臨みました。ゲーム展開からいくと、お互いの良さを打ち消し合ったゲームだったと思います。お互いの良さを打ち消し合うだけの走力と、戦いと、そしてインテリジェンスをお互いのチームの選手たちが持っていたんだと思います。これ以降の出来事は僕が話す必要はないと思います。五分五分の戦いをしている中で一人少なくなれば、間違いなく不利になる。イエロー+イエロー=レッドという、この計算が冷静に頭でできずにうちの選手が一人退場した。一人少なくても失点しないチームもあります。一人少なくても先制されて追いつくチームもありますし、一人少なくても逆転するチームもあります。今の自分たちは、鹿児島さん相手にそれを出来る力がなかったということです。ただ、うちの退場した選手が気が緩んでたとか、悪質なプレーヤーだとか、そういうことであれば私は絶対に許しませんけど、そうではなくて、秋田のため、チームメイトのため、自分のために、全力で戦った結果がこうなってしまったので、私も、チームメイトも、クラブの全員が今回のあの選手を許すと思います。あとは全員が顔を上げて、残り五試合に向かっていきたいと思います。

ハーフタイムコメント

声を止めない、足を止めないを続けよう

ポジショニングをしっかり取ろう

逆サイドの意識を持とう

あと45分とロスタイムで絶対に取ろう

西岡謙太選手(鹿児島)

試合が90分終わって疲れましたけど、勝てて良かったです。なかなか自分たちが攻撃する時間は多くなかったですけど、しっかり耐えて、チャンスをしっかり決めることができて、1-0で勝つことができて、ディフェンス陣も含めて粘り強く戦えたので良かったです。残りもしっかり自分たちらしく粘り強く戦って、最後に笑って終われたらいいと思います。

水本勝成選手(鹿児島)

相手の前の選手の技術の高さだったりスピードっていうのは、うちがスカウティングした中でかなりレベルの高いものがあるなって思ってて、その中で相手のいいところを消しながら守備をしていこうかなと思ったんですけど、縦に速いサッカーを前半秋田さんがやってきて、最初は戸惑いながら裏も若干とられながらやってて、その中で修正できたことが無失点につながったのかなと思います。やっぱり今日みたいな戦いがうちらしいっちゃうちらしいんで、その中で2点目3点目っていうのを獲っていかないと、やっぱり上のチームには勝てないのかなという、課題も見つかった一戦だったかなと思います。次はアウェイで相模原戦なんですけど、そこも自分たちらしい粘りとか、最後まであきらめないっていう姿勢をアウェイでもしっかり出して、勝ち点3を獲って帰って来れるように頑張りますので、またぜひ鹿児島から応援よろしくお願いします。

山田裕也選手(鹿児島)

相手が10人になったっていうのがあったんで、戦術的に2トップに変えて僕が入りました。僕が受けてノリ(藤本憲明選手)が背後に抜けるっていうのを意識してやってましたし、2トップになってゴール前の迫力っていうのも大きくなったのかなと思います。0-0だったし、勝ち点3獲りたかったんで、決めたかったんで、決めれて良かったです。(ゴールは)マジで本当に覚えてないんですよ。決めれて良かったっていうのはあったし、それが決勝点につながったっていうのがホッとしてます。



  • J2ライセンス交付に向けて、スタジアム建設を願う署名活動が行われた。「鹿児島に新スタジアムを」の幟が光る。
  • 鹿児島まで駆け付けた秋田サポーターの皆さん。中には一週間かけて車で鹿児島入りした強者も。
  • 見事勝ち点3を獲得し、2位大分と再び勝ち点で並んだ鹿児島・浅野哲也監督。数的優位を活かし、厳しい戦いを制した選手たちを称えた。
  • 惜しくも勝利を逃し、上位争いから一歩後退となった秋田・間瀬秀一監督。56分に退場となった比嘉選手について「全力で戦った結果」と労った。

Reported by 川端究無



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