〔J3第27節:鹿児島vs.琉球〕レポート:勝ちたかった、悔しい、痛い敗戦。それでも最後まで優勝を目指す。

  • ここまで全試合フル出場を続ける冨成慎司選手。今節も最終ラインから前線まで走り続けた。
  • 明治安田生命J3
  • 第27節
  • 鹿児島
  • 琉球
  • 5分中原優生(鹿児島)
  • 22分知念雄太朗(琉球)
  • 51分平田拳一朗(琉球)
  • 鹿児島県立鴨池陸上競技場
  • 2016年10月30日13:00

どうしても勝ちたい試合だった。首位栃木と勝ち点差3の3位につける鹿児島ユナイテッドFC。この試合に勝てば、他会場の結果次第では首位に立つ可能性があった。
それだけではない。今節は「鹿児島市民サンクスデー」と題し鹿児島市民を無料招待。会場には5000人近い観衆が詰めかけた。さらには地元テレビ局による地上波生中継もあり、鹿児島県全体に鹿児島ユナイテッドのサッカーをアピールするこれ以上ないチャンスだったのだ。J2ライセンス交付に向けた、新スタジアム建設への追い風とするためにも、是が非でも勝ちたい一戦だった。

選手からも、監督からも、この試合に勝ちたい、勝たねばならないという思いは痛いほど伝わってきた。だが、今回はその思いが強すぎたがために敗戦を喫してしまった。

立ち上がりは良かった。前半開始早々に獲得したコーナーキック。五領のキックにゴール前の中原が頭で合わせ、あっという間の先制点。ファーストチャンスをものにし、一気に流れに乗るかと思われた。しかし、琉球・金監督が「良いのか悪いのか、早い時間に失点するのは慣れている」と語ったように、琉球の選手たちはあわてることなく反撃を開始。足元の技術と動き出しに長けた琉球攻撃陣のパスワークとドリブルに翻弄され、鹿児島のプレスがことごとくかわされると、失点できない、負けられないという思いからか、両サイドハーフやボランチが下がり気味になり、前線のプレスとの連動性が失われていく。琉球はさらに楽にボールを保持できるようになっていき、鹿児島陣内でプレーする時間が長くなっていった。いわゆる「悪い時」の鹿児島はこういう状態に陥りやすい。

そして22分、中央でのセカンドボールを拾われると、知念、富樫のパス交換からディフェンスラインの裏へ抜け出されGKと一対一に。そのまま冷静にゴールへと流し込まれ、難なく同点ゴールを決められてしまった。
その後は鹿児島も藤本のシュートや赤尾のフリーキックで反撃を試みるが、琉球GK朴に阻まれ勝ち越しならず。逆に前線からプレッシャーをかけられると、ボールの出しどころがなくカウンターから何度もピンチを招いてしまう。それでも、GK山岡の好セーブやディフェンス陣の体を張ったプレーで何とかピンチをしのぎ切り、1-1で試合を折り返す。

ホームでの、絶対に勝ちたい試合。「主導権を握りたかった」という鹿児島・浅野監督は、この流れを断ち切るため、後半頭から中原に代えてスピードのある新中をピッチへ送り出す。ディフェンスラインが高く、両サイドバックが高いポジションを取る琉球の背後をとりにいく作戦だ。監督の期待に応えるかのように縦横無尽に駆ける新中。藤本とのコンビネーション等でいい形ができ始め、決定的なチャンスが生まれるか…と思われたが、琉球ディフェンス陣はこれに徐々に対応しチャンスの芽を潰していく。 前半守備に追われたこともあり、裏をとった新中に続いて飛び込んでいけるだけの足を残した選手が少なく、攻めが単調になり攻撃に厚みを持たせることができなかったのだ。攻撃が単発になれば対処はしやすい。 前線との間にスペースができたことで、守備でも隙が生まれてしまった。51分、中盤フリーでボールを受けた田辺に逆サイドへ振られ、左サイドから駆け上がっていた左サイドバックの平田にノーマークでボールが渡る。ペナルティエリア内で完全にフリーになった平田は思い切りよく右足一閃。一瞬のうちに逆転ゴールを許してしまう。

どうしても勝ちが欲しい鹿児島は、ゴールへの嗅覚に優れた山田を投入し、さらに水本を前線へ配置してパワープレーでがむしゃらにゴールを狙う。看板に激突するほどの勢いでボールを追った赤尾をはじめ、選手たちは最後の最後まで気迫に満ちたプレーで勝利を追い求めた。
だが、届かなかった。

試合後、浅野監督は「後半頭からメンバー交代したんですけども、結果的に見ると、もう少し自分自身が粘り強く戦えれば、もしかしたら良かったのかなと思います」と、勝ちを急いだ自身の采配に対する反省を口にした。これまで的確な交代策で数々の劇的勝利を演じてきた浅野監督だったが、この日はその交代策が結果に結びつくことはなかった。浅野監督は、この敗戦を自身の責任と語った。だが、結果論として「こうしていれば良かった」ということは言えるかもしれないが、全ての局面で最良の判断ができる監督など存在しないだろう。そして、浅野監督という人物が、こういった敗戦を糧にできる監督であることを、多くのサポーターはご存じなのではないだろうか。

たしかに痛い敗戦ではあるが、優勝の可能性が閉ざされたわけではないし、目の前の一試合一試合、全力で戦うチームの姿勢が変わることもない。どんな挫折が待っていても、それを乗り越えてまた一つ成長した姿を見せてくれる。
次節では、また一味違う鹿児島が見られるはずだ。

浅野哲也監督(鹿児島)

ありがとうございました。それから、素晴らしい雰囲気を作って下さったサポーターの皆様にも感謝を申し上げます。残念ながらホームで敗戦をしてしまうというところは非常に残念ですし、前回対戦した時もアウェイでやられてる相手に対して、しっかり準備をしたつもりだったんですけれども、結果が出なかったというところではまだまだ準備不足だったなと思います。いつもの我々の守備のところで狙いどころでボールを奪うというシーンがほとんど今日は出せませんでした。もちろん相手の攻撃のつなぎのクオリティが高いということは分かってましたし、そういうサッカーに対してうちの守備が上手くはまればいいチャンスも作れるというような予想はしてたんですけども、それ以上に向こうの質の高さ、行っても奪えないという部分が心理状態に影響したところが後手に回った要因かなと思います。私自身も後半頭からメンバー交代したんですけども、結果的に見ると、もう少し自分自身が粘り強く戦えれば、もしかしたら良かったのかなと思います。この雰囲気の中で最後の最後まで走りきってくれた選手たちには感謝していますが、結果に対しての私の責任は大きいという風に思います。ただ、残り三試合あります。次の藤枝さんも非常に攻撃のクオリティ高いですから、しかもホームで勝率が高いチームなので、また厳しい戦いになると思いますが、絶対に連敗をしてはいけないですし、アウェイで勝ち点1ではなくて、勝ち点3を獲れるように、また明日から準備をしたいと思います。

ハーフタイムコメント

頭と足を最後まで止めないこと

中盤でのハードワークをもっと表現する(前で奪う)

粘り強く最後まで戦うこと

金鍾成監督(琉球)

厳しい試合をものにできて、良かったです。やはり最後すごいパワーで押されてきたんですけど、運よく守り切って勝つことができました。浅野監督がユナイテッドは「守備のチームだ」と言われてるんですけど、どう見ても攻撃が良い。そこをいかに我々の攻撃で返していけるか、というところの戦いをもっていきまして、失点がちょっと早かったんですけど、その後ペースを掴んでボールを保持することができた。前線からプレッシャーが来るか来ないか、来たらかいくぐろうということだったんですけど、あまりプレッシャーが来なかったんで、ペース掴んで、それで得点に結びついたというところですね。

ハーフタイムコメント

ボールをもっと動かそう

後半「良いゲーム」はいらない

得点を奪い失点を0、そこに集中しよう

赤尾公選手(鹿児島)

優勝するために今日は勝たないといけない試合だったので、非常に痛いですけど、あと3試合全勝すればまだ優勝はあるので、切り替えることが一番大事だと思います。僕は前回の対戦では出れなかったんで印象はなかったんですけど、やってみて非常に一人ひとり自信もってサッカーやってますし、守備してても掴みづらい良いチームだったなと思います。ただ、僕らもまだ点獲れるチャンスもありましたし、そういう意味では相手が一枚上手だったなという感じです。僕ら一人ひとりの距離が広くなってしまって、前からもプレッシャーがかけれなかったですし、連動した守備っていうのがちょっとできなかったんで、琉球さんくらい自信を持ってやってるチームっていうのはあのくらいのプレッシャーだと平気でやると思うんで、相手に自信を持ってサッカーさせてしまったなっていう感じなんで、相手の上手さもありますけどもう少し自信を持ってアグレッシブにボールを奪いに行ければもっと違った展開になってたと思うんで、そこは次に活かしていければいいかなと思います。

山岡哲也選手(鹿児島)

相手の攻撃陣が非常に強力なのは分かってたんですけど、前半追いつかれて、後半立ち上がりに失点をしてしまって、対応するように指示は出してたんですけど、2失点してしまってすごく悔しい気持ちです。前線から守備をして高い位置で取って、ショートカウンターっていうイメージを前半あまり持てていなかったので、まず前から守備に行ってからの攻撃を目指そうという風な前半終わってからの指示だったんで、そういう部分では最初前からすごく行けましたし、良い部分はあったと思いますけど、ブロック引いた時の寄せ方だったり、マークの見方だったりっていうのがまだ課題が残ったので、そういうところはしっかり修正していきたいなと思います。なるべく同サイドで取り切りたいっていう守備を目指してたんですけど、逆に変えられてボランチがフリーになったところでサイドバックに走りこまれてフリーになったっていうところは、マークの見方もそうですし、パサーに対してのプレッシャーがないっていうところもすごく修正が必要だなという部分が残りましたし、フリーで打たれるっていう部分ももっと少なくしていかないといけないなと思いました。皆がすごくハードワークして、守備をしてくれてる部分があったので、そういう意味でもなんとしても最少失点で試合を終えることが自分の仕事だと思ってるんで、ピンチもありましたけどチーム全体で守れた部分もあったんで。でもやっぱり2失点してしまったところが勝敗を分けるっていうサッカーの怖さが分かったんで、そういうところをまた来週の試合に向けてやっていきたいと思います。今回負けてしまいましたけど、まだ優勝するチャンスは絶対あるので、またチーム一つになって優勝目指して頑張りますので、応援よろしくお願いします。

  • 今節でも、新スタジアム建設に向けた署名活動が実施された。
  • 鹿児島のスポンサーであるナンワエナジーのマスコット「えらブー」にも署名を依頼するサポーター。えらブーは乗り気なようだが、果たしてペンは持てるのだろうか。
  • 琉球サポーターの方々も鹿児島を満喫されたご様子。みんなで乾杯!
  • 優勝戦線から一歩後退となった鹿児島・浅野監督。それでも、優勝をめざし最終節まで戦い抜くことを改めて誓った。
  • 見事なサッカーで勝利を収めた琉球・金監督。3連勝で6戦負けなしと好調を維持している。

Reported by 川端究無



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