〔J3第21節:鹿児島vs.鳥取〕レポート:前試合で大量失点で敗れた鹿児島。中3日での試合となる鳥取を迎え撃つ。ターニングポイントは先制点。

  • リーグ戦今シーズン初出場を果たした内薗大貴選手(鹿児島)。鋭い出足で何度もセカンドボール争いを制し、チームに流れを引き寄せた。
  • 明治安田生命J3
  • 第21節
  • 鹿児島
  • 鳥取
  • 42分永畑祐樹(鹿児島)
  • 48分赤尾公(鹿児島)
  • 鹿児島県立鴨池陸上競技場
  • 2016年9月11日17:00

約1か月の中断機会を経て再開した明治安田生命J3リーグ。
勝ち点37で2位に付ける鹿児島ユナイテッドFCは、ホーム鴨池陸上競技場で15位ガイナーレ鳥取を迎え撃った。
鳥取は天皇杯2回戦で大宮アルディージャと7日に対戦したばかり。
中3日でアウェイ2連戦、移動の続く厳しいコンディションでの試合となった。メンバーも大宮戦から二人入れ替えたのみ。おそらく、試合終盤になればなるほど鹿児島が優位になる。
その鹿児島も、8月28日の天皇杯1回戦でアビスパ福岡と対戦、2-7で大敗を喫した。
となると、この試合のターニングポイントは先制点となる。
鳥取も鹿児島も、早い時間帯で先制点を奪ってゲームをコントロールしたいところだ。

鹿児島は、前述したように8月28日の天皇杯1回戦でアビスパ福岡と対戦し2-7で大敗を喫した。他のJ3クラブが結果を残す中、大量失点での敗戦。
だが、浅野監督はこれをプラスに捉え、「もう一度自分たちの戦い、スタイルを見つめ直そう」という意識で、守備への切り替えやセットプレーのディフェンスを中心にトレーニングを重ねてきた。その鹿児島の守備が、早い時間帯から攻勢を仕掛けてくるであろう鳥取に対しどれだけ持ちこたえられるかがこの勝負の鍵を握ると誰もが予想した。

その予想通り、試合開始から鳥取が飛ばしていく。この日のメンバー表では、鳥取は5-4-1のフォーメーションになっていたが、実際にはDFの片岡が中盤の底に位置し、MF林がトップの位置に入る4-4-2のような布陣だ。
柱谷監督は、前回の鹿児島との対戦で中盤で自由にボールを繋がれた反省を踏まえ、「ショートパスを全部消していく」ことを指示。鹿児島の最終ライン、さらにはGKまでボールを追いかけ、すべてのパスコースを消しにかかる。ボールを保持すれば、抜群のテクニックを誇るフェルナンジーニョを起点に攻撃。鹿児島のディフェンスを一方のサイドに集中させると、一気に逆サイドへ展開しチャンスを作っていった。
鹿児島も両サイドの裏のスペースを狙った攻めに活路を見出そうとするが、序盤は鳥取ペースで試合が進む。鹿児島は何とか自分たちのペースを掴もうと、高い位置からのプレスをかけ、ボランチも積極的に仕掛けていく。だが、これが裏目に出てしまう。

鳥取の2トップと両ウイングの圧力によってディフェンスラインが下がり目になると、ボールを奪うべく前に出たボランチとディフェンスラインの間に大きなスペースが生まれてしまったのだ。
21分、このスペースを鳥取に突かれ持ち込まれると、強烈なミドルシュートがバーを直撃。さらに畳み掛けるようにシュートを連発されるが、ディフェンス陣が必死に体を張ってこれを阻止し凌ぎきった…かと思われたその時、ペナルティエリア内で鳥取の選手が倒されたとしてPKが宣告される。

スタジアムは騒然。鹿児島にとっては絶体絶命の大ピンチ。
蹴るのは鳥取のエース、フェルナンジーニョ。鹿児島は守護神、山岡にすべてを託す。
スタジアムに緊張が走る。
ホイッスルが鳴り、ステップを踏むフェルナンジーニョ。
ボールが蹴りだされる。山岡はゴール右へ。
だが、ボールは左だ!
逆を突かれた!

しかし、ボールはゴール左へ逸れていく。安堵と歓声が入り混じるスタンド、PKは失敗に終わった。
「あのPKさえ入ってれば」と悔やんだ柱谷監督。早い時間での先制点を是が非でも獲りたい鳥取だったが、千載一遇のチャンスを逃してしまった。

このあたりから、鹿児島のプレスが少しずつかかるようになってくる。ビルドアップへの寄せが早く、サイドチェンジされる前にパスコースを消してボールを奪いきる。ただ、前線までボールを運んでも、なかなかシュートまでは持ち込めない。
両チームとも完全には流れを掌握できないまま、時間は40分を経過。このまま前半を終えるかとも思われたが、ここで見せ場が訪れた。

42分、ボールを奪ったフェルナンジーニョが前線へ一気にパスを送る。鹿児島の守備はまだ整っておらず、このパスが通れば決定的な形になる。
だが、このパスに反応したのは鹿児島DF田中。見事なインターセプトから、そのまま前線へ大きく蹴りだすと、左サイドのスペースでボールを受けた中原がドリブルで切り込んでいく。
その中原が出したパスに猛然と走りこんできたのはMF永畑。今まで何度も居残りでシュート練習してきたという位置からの狙いすましたシュートは、GKが一歩も動くことができないままゴールネットへ吸い込まれた。

待望の先制点を奪った鹿児島が、リードして前半を折り返す。
鳥取としては決定機を逃し、逆にワンチャンスを決められるという悔しい展開になった。柱谷監督は、後半に向けさらに積極的にシュートを打ち、同点、逆転を狙っていくよう指示。
しかし、後半先にチャンスを迎えたのは鹿児島の方だった。

後半開始直後、鹿児島はゴール正面、ペナルティエリアすぐ外という絶好の位置でフリーキックのチャンスを得る。
ボールの前には中原と赤尾。どちらが蹴るのか。

先に走り出したのは中原。だが、ボールに触れず駆け抜ける。
遅れて動き出したのは赤尾。急がず、あわてず、ゆっくりと助走をつけて右足を振り抜く。
ボールは大きく弧を描き、誰にも触れることのできない芸術的な軌道で、壁を、GKをすり抜けゴールに突き刺さった。

あまりにも大きな追加点が決まった。こうなると、点を獲るしかない鳥取は攻勢に出ようとするが、前半に比べて鹿児島の守備が安定し、パスがつながりにくくなっている。
それもそのはず、浅野監督は前半上がり気味だったボランチにディフェンスラインとの距離を空けすぎないよう指示。赤尾、内園の両ボランチもコミュニケーションをとり合い、ポジショニングを修正していたことで、中盤にあったスペースが消されていたのだ。

だが、鳥取はそれでも鹿児島のプレスをかいくぐってくる。特にフェルナンジーニョがボールに絡むと攻めに勢いが生まれる。二人、三人とマークがついても簡単にはボールを失わず、ファウルを誘ってセットプレーのチャンスを作り出す。やはり、この選手を自由にさせるわけにはいかない。

徐々にプレスがかかりにくくなったと見た浅野監督は、64分にDF田中に代えて寺田を投入。ここからの時間を無失点に抑えるため、無理に前線からリスキーなディフェンスを仕掛けるのではなく、しっかりと相手の攻撃を跳ね返し続ける守備に切り替えてきた。これでさらに守備の安定感が増す。

74分、82分には田上、山田という運動量のある選手たちが送り込まれる。二人は監督の期待に応えるようにピッチを駆け回り、前がかりになった鳥取からボールを奪うと、人数をかけない、リスクの少ない攻めからでもチャンスにつなげていく。

終盤、徐々に足が止まってきた鳥取は、状況を打開するため190cmのバルチ・ジュニオールと183cmの川鍋を前線に配置し高さで勝負に出た。
だが、流れの中から効果的なボールを入れることができず、その高さを活かせない。鹿児島は課題としていたセットプレーの守備でも、長身の選手たちに仕事をさせず防ぎきり、カウンターからさらなる猛攻に出る。

鳥取も最後の力を振り絞ってボールを奪い取り、前線のバルチ・ジュニオールへボールを送る。だが、FW藤本が自陣ペナルティエリアまで戻ってこのボールをカット。アディショナルタイムには、右サイドで試合終盤まで全力疾走を続けた五領の足がつってしまい、交代枠を使い切っていたため10人での戦いを余儀なくされたが、数的不利を感じさせない守りで最後まで鳥取の攻撃を跳ね返し、全員で守り通した鹿児島が価値ある完封勝利を収めた。
試合後、鹿児島は監督、選手ともに「無失点で勝利できたことが大きい」と口にし、浅野監督が「ゼロで抑えたいという気持ちが凝縮された90分」と評価したように、選手全員が守備への意識を持って戦い続けた結果と言えるだろう。

福岡戦での大量失点で意気消沈することなく、しっかり修正してすぐに完封勝利を収めてみせる。ブレない、崩れない、このチーム全体の統一された意識、強固な精神力には脱帽だ。
シーズン当初から感じていることだが、鹿児島には何かのきっかけでチームが崩壊してしまうような危うさが微塵もない。
これからも苦しい試合は続くかもしれないが、それでも、鹿児島の選手たちは文字通りチーム一丸となって、どんな危機でも乗り越えてくれるはずだ。

そんな選手たちを支えていけるのが、サポーターという存在だ。この日、鹿児島ユナイテッドFC創設から、JFL時代も含めての通算観客数が10万人を突破した。2014年シーズンから積み重ねてきたサポーターの後押しが、また一つ形になったのだ。
こうしたサポーターの応援がチームに力を与え、チームの勇姿がサポーターに力を与える。サポーターが増えれば増えるほど、チームも強くなり、ホームタウンとのつながりもより強固なものになるだろう。
そのためにもいつの日か、この10万人という観客動員数を1シーズンで達成できるチームになってほしい。
毎試合のように1万人近いサポーターが声援を送るスタジアム、想像しただけで心が躍る。
そんなスタジアムの迫力を、いつかここ鹿児島で味わってみたい。

   

   

  • 試合前には、鹿児島・徳重代表と鳥取・岡野GMによるトークショーが行われた。
  • 多くの鳥取サポーターがアウェイの地へ応援に駆け付け、劣勢になっても最後まで熱い声援を送り続けた。
  • この日の観客数も3000人を超えた。昨シーズンに比べて、平均観客動員数は大幅にアップしている。
  • 開幕からここまで、グッズの充実度も右肩上がりだ。次節にはまた新商品が登場するかも?

Reported by 川畑究無



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